女子プロレス界におけるイノベーションの一つとして、スターダムが提供した「Yシャツマッチ」は、従来のプロレスの枠組みを超えたエンターテイメントを提示し、ファンの間で物議を醸すこととなった。10月18日、東京・新宿フェイスでの「夏すみれプロデュース10周年大会」において、異例の「Yシャツカーニバル」という時間差バトルロイヤルが、一層の熱狂をもってステージ上で繰り広げられたのである。
このマッチにおいて最も注目すべきは、参加した9選手全員がYシャツを着用し、それを着たまま戦うというルールであった。このアイデアは、プロレスのアクションと観客の興奮を高めるための視覚的な要素を巧みに組み合わせたもので、試合のダイナミズムと緊張感を一層高める結果となった。
しかし、その核心には、通常のプロレスルールを根底から揺るがす、特殊なルールが設けられていた。それは、選手がリング外に落ち、両足が地面についた際に、水鉄砲を装備した「びしょびしょマシンガンズ」からの攻撃を受けるというもの。更に、Yシャツが脱げた時点でその選手は失格となる、というものであった。これにより、選手たちは単に相手を倒すだけでなく、自らの服装を守りながら戦わねばならないという、二重のプレッシャーにさらされることとなった。
この日のカーニバルは、参加選手が1分ごとにリングへと登場し、その中でいくつものハイライトが生まれた。白川未奈のセクシータイムから、飯田沙耶とZONESの間で突如勃発したマッチョ対決まで、観客は次々と繰り広げられるアトラクションに息をのんだ。これらの混沌とした展開は、リング上でのカオスな空間を作り出し、それがこのイベントの魅力の一部となった。
そして、この混乱の渦中で、予想外の結末が待っていた。新人レスラーChiChiが、経験豊富なラム会長を巧みに制し、その後、月山和香のYシャツをはぎ取ることに成功。これが彼女のプロレスラーとしてのデビューからの初勝利となったのである。ChiChiにとって、この勝利はキャリアの大きな転換点となる可能性を秘めている。なかなか勝利に手が届かなかった彼女が、この特別な試合で初めての栄光を掴んだのだ。
試合後、Yシャツクイーンの称号とコブラティアラを手にしたChiChiは、勝利の喜びと今後の野望について語った。彼女の意欲は、スターダムや他団体のレスラーたちに新たな刺激を与え、女子プロレス界における更なる発展を促すことだろう。そして、このYシャツマッチが、伝統的なプロレスの概念に新たな一面を加え、ファンや選手たちにとって新しいエンターテイメントの形を提示したことは、間違いない事実である。
引用:東スポWEB